テスターからビジネスアナリスト(BA)へ転身するためのステップバイステップガイド

記事の目次 4項目 · 11分で読めます
  1. 1. なぜビジネスアナリストなのか
  2. 2. なぜテスターはビジネスアナリストになる絶好のチャンスを持っているのか
  3. 3. テスターからビジネスアナリストへ
  4. まとめ

テスターは、開発されたソフトウェアが顧客の最終的な要求を満たしているかどうかを検証する専門職です。一方、ビジネスアナリスト(BA)もまた、構築・納品されたソフトウェアが顧客の最終的な要求に合致しているかを確認する責任を負っています。この共通点があるからこそ、テスターはBAの役割へ比較的スムーズに移行できます。BAとテスターが互いの役割を経験すれば、双方がプロジェクトに有益なスキルを高められるでしょう。ソフトウェアシステムの検証という観点では、テスターとBAはまさに同じコインの表と裏のような関係にあります。

1. なぜビジネスアナリストなのか

プロフェッショナルなテスターは、ソフトウェアに関する包括的な知識と理解を備えています。このスキルセットは、今日のIT業界においてテスターがさまざまな役割へ進むための扉を開いてくれます。

開発サイクルと開発プロセスを深く理解することで、テスターはリリースマネージャー、自動化エンジニア、QAストラテジスト、ソリューションアーキテクト、上級マネージャー、そしてビジネスアナリストといったキャリアを選択できるようになります。

その中でも、ビジネスアナリストへのキャリアチェンジはテスターにとって有望な選択肢のひとつだと言えます。ビジネス分析は、テスト業務や前述のいずれの役割と比べても、はるかに広い領域をカバーする仕事です。

将来性があり、収入面でも魅力的なキャリアパスです。世界各国を飛び回ることを楽しめるテスターであれば、挑戦しがいがあり達成感の大きいBAという仕事を存分に楽しめるはずです。さらにビジネスアナリストは、リードBA・シニアBA、コンサルタント、プロダクトオーナー、プロダクトマネージャーへとステップアップしていくことも十分に可能です。

2. なぜテスターはビジネスアナリストになる絶好のチャンスを持っているのか

テストの専門家がビジネス分析へのキャリアチェンジを考えるべき理由は数多くあります。

テスターは細部にまで注意を払い、構築されるソフトウェアシステムを深く理解しています。

テスターはソフトウェアの品質と完成度を保証する存在であり、これがそのままUSP(独自の強み)になります。

優れたテスターとは、常に顧客の利益を最優先に考えられる人材です。

テスターは要件仕様書を読み解き、分析し、レビューできます。この力はBAの役割を目指すうえで大きな武器となります。

テスターの分析力は、要件仕様書に曖昧な点があればそれを的確に指摘するというBAの仕事に直結します。

テスターは、求められた要件どおりにソフトウェアが作られているかを批判的な視点で確認する立場にあります。この姿勢は、顧客の要求を突き合わせて確認する場面で大いに役立ちます。テスターは要件ヒアリングの段階から、システムが実際に動く姿を思い描く習慣を身につけています。その結果、過剰で現実的でない要件を早い段階で取り除くことができるのです。

テスターは常に批判的に物事を考えるため、システム全体の大きな絵を自然と意識します。これは、とりわけ要件定義のプロセスにおいて、ビジネス分析に大きく貢献する最大の長所です。

テスターはプロジェクトに関わりながら不具合報告書を作成します。この経験によって、ビジネス分析で不可欠となるドキュメンテーションのスキルが磨かれます。

さらに、アジャイル開発の現場で働いているテスターであれば、ビジネス分析への移行はいっそう容易になります。

アジャイルでは、要件全体を論理的なまとまり(要件のブロック)に分割し、システム全体を一度に開発するのではなく、一部の要件ごとに開発・テスト・リリースを繰り返して顧客に提供します。リリースされるソフトウェアは、顧客にそのまま出荷可能(shippable)な状態であることが求められます。

アジャイルチームは「自己組織化」されたチームであり、プロダクトオーナー(要件を定義・管理するビジネスアナリスト)、スクラムマスター(チームの管理&統制)、そしてチームメンバー(開発者とテスターを合わせて通常5〜9名)で構成されます。つまり、チームの推進力と規律がすべてを左右します。ビジネスアナリストは、プロダクトバックログ(要件)の管理に始まり、スプリント計画、開発工程における開発者への要件面のサポート、そして上位レベルでの要件確認まで、一連のプロセスに関与します。

多くの場合、ビジネスアナリストはサイクルの中でソフトウェアのビルドを確認する作業も担っています。

テスターもまた、スプリント計画やレビュー会議の段階から参加し、開発者と密に連携しながら入念なテストを行います。

このように、ビジネスアナリストとテスターの責任範囲には重なり合う部分があります。テスターがビジネスアナリスト、つまりテスト経験を持つBAになれば、その関与は工程の最初から最後まで及びます。だからこそ、アジャイルの枠組みの中ではテスターからBAへの転身がより容易になるのです。

3. テスターからビジネスアナリストへ

現在テスターまたはQAの専門職として働きながら、ビジネス分析へのキャリアチェンジを考えている方に向けて、ここからは最適なステップバイステップガイドをご紹介します。

  • ステップ1:

これは前向きな一歩であり、その準備はまだテスターとして働いているうちから始めるべきです。

ビジネスアナリストの仕事ぶりと責任範囲を、スポンジのように貪欲に観察し吸収してください。アジャイル開発の一員であれば、これは容易に実践できます。アジャイルでない環境であれば、BAと密に協働できるよう、より意識的な努力を重ねましょう。

BAの業務量を分担し、積極的に手を差し伸べてください。自分の担当業務をこなしながら、小さなタスクを引き受けることは可能です。海外の顧客とのやり取りや、要件ヒアリングのプロセスにおける顧客要求への対応など、BAの動きを間近で観察しましょう。

  • ステップ2:

BAから提供される要件仕様書を、テストの視点ではなく別の角度から読み、分析し、レビューしてください。要件をヒアリングする側の視点で読むのです。「なぜこの要件が求められているのか」と問いを立てる習慣を身につけましょう。

業務プロセスを理解し、端から端まで一貫した流れとして捉えてください。要件に抜け漏れがないかを見極めるため、プロセスと要件を既存のソフトウェアと対応づけてみましょう。

100%カスタマイズ開発であれば、自分なりの解決策を考えてみてください。あなたが導き出す解決策とビジネスアナリストが提示する解決策は異なるはずです。あなたの案のほうが優れている可能性も十分にあります。

  • ステップ3:

ここまでの取り組みを実践できているなら、ビジネスアナリストになるための具体的な計画へ本格的に進むことを真剣に考えてよいでしょう。

まず何よりも重要なのが「コミュニケーション能力」です。自分はまだ十分ではないと感じるなら、すぐに改善に取りかかってください。優れた口頭・文章によるコミュニケーション能力は必須条件です。

ビジネスアナリストは、要件をヒアリングするために顧客や業務上のさまざまなステークホルダーとやり取りする必要があります。さらに、その要件を開発チームへ正確に伝える役割も担います。

BAは、開発者が容易に理解できる形へ要件を仕様として落とし込まなければなりません。コミュニケーション能力が不足していると、要件の収集段階や、顧客から開発チームへ要件を引き渡す段階で誤りが生じ、結果として誤ったソフトウェアシステムが作られてしまいます。

外国語の読み書きと会話の力は、文章作成のサポートを活用しながら、そしてチームメンバーと外国語で話す努力を誠実に続けることで、少しずつ着実に伸ばしていけます。

最も効果的なのは、仕事の場だけでなくプライベートでも同僚と外国語でやり取りすることです。フィードバックを素直に受け止めて修正し、地道に改善を重ねてください。頭を使い時間もかかりますが、決して不可能なことではありません。

  • ステップ4:

次のステップは、MBAまたはそれに相当する学位を取得することです。今やこれは必須(COMPULSORY)と言えます。

マネジメントに関する学位を持たないまま、ビジネスアナリストとしてキャリアで成功を収めるのは容易ではありません。一部の業界にはマネジメント系の学位を持たないBAも存在しますが、優良で評価の高いIT企業は例外なくマネジメント分野の学位を重視します。学位がないことは、キャリアパスにおいて足かせとなり続けるでしょう。

それには相応の理由があります。MBAは大きな差を生みます。文字どおり108%変わります。MBAはあなたの中にある最良のものを引き出してくれます。コミュニケーション能力、問題解決能力、人間性の成長、リーダーシップ、意思決定力、マネジメント力、交渉力と説得力を高め、そして最後に、しかし決して軽視できない点として、高い給与を得ることにもつながります。

テスターにとっては、フルタイムのMBAコースを履修するほうがより多くのメリットを得られます。

とはいえ、パートタイムのMBAコースを選ぶこともできます。パートタイムかフルタイムかを問わず、マネジメント教育において実績と評価のある機関で学位を取得することが重要です。人間性の成長を伴わない学位は、長い目で見れば得られるものが少なくなってしまいます。

多くの大手IT企業では、ビジネスアナリストの職務においてMBAまたは同等の学位が必須要件となっています。BA職に応募する場合、MBA取得者と未取得者とでは給与水準も異なります。したがってMBAは、人間性の成長とコミュニケーション能力の向上に加えて、報酬面でもポジション面でも成長をもたらしてくれるのです。

  • ステップ5:

フルタイムのMBAコースを履修するとなれば、現在の仕事を離れる必要が生じます。しかし、それだけの価値は十分にあります。マネジメントコースを修了した後には、より大きなメリットを享受できるはずです。

パートタイムのMBAコースを選ぶのであれば、退職しなくても済みます。ただし、勉強と仕事を両立させることは多くの場合かなりの負担になります。それでもやはり、注いだ努力と乗り越えた苦労は必ず報われます。

誠実さと忍耐をもって、マネジメントコースを最後までやり遂げてください。ほとんどのマネジメントコースの期間は1年から2年です。

  • ステップ6:

最後のステップは最も重要で、かつ最も難しい段階、すなわちビジネスアナリストへの転身そのものです。マネジメントの学位を取得したら、まずは同じ会社の中でBA職に応募してみるとよいでしょう。もちろん、社外に挑戦するという選択肢もあります。

ただし、社外へ移るよりも同じ組織内で職種を変えるほうが容易です。上司やチームメンバーがあなたのスキルと志向をすでに理解していれば、改めて実力を証明する必要はありません。テスターとして在籍している間にBAや関連業務へ関わってきた実績そのものが、採用担当マネージャーに好印象を与える大きな材料になります。

同じ組織・同じソフトウェアに携わってきたことは大きな強みです。業務プロセスをすでに把握しているからです。

その次は何をすべきでしょうか。

  • BAはさらにスキルを高める必要があるため、公的に認められた資格の取得に挑戦しましょう。
  • IIBA(国際ビジネスアナリシス協会)は、権威ある資格CBAP(Certified Business Analysis Professional)を提供しています。その他の資格としては、CABA(Certified Associate Business Analyst)や、CSBAによるソフトウェアビジネスアナリストの認定資格も検討できます。
  • これらの資格は、世界的にも重要性を増しつつあります。
  • BAスキルを高めるための研修ワークショップや、オンライン・オフラインの教育機関も数多く存在します。アジャイルフレームワークに関する資格取得を検討するのもよいでしょう。
  • BAは要件定義の中で、各種の図やフローチャート、スイムレーン図を作成するなど、ドキュメント作業に多くの時間を費やします。ワイヤーフレーム、各種図表、業務プロセスのマッピング資料などを作成するために、MS VisioやPencil、Balsamiqといったツールの習得も検討すべきです。

まとめ

テスターからビジネスアナリストへの転身を考えているのであれば、それは非常に前向きな選択です。ビジネスアナリストのキャリア成長は速く、他の職種と比べて組織の階層を駆け上がるスピードにも勢いがあります。ビジネスアナリストは、ビジネス側と開発チームをつなぐ橋渡し役であり接点となる存在です。さらに、さまざまなステークホルダーと関わることも求められます。だからこそ、既存の枠にとらわれない発想(think outside the box)が欠かせません。分析力と戦略的な思考を駆使して自律的に働く必要があるため、優れたテスターは優れたビジネスアナリストになる素質をすべて備えている、としばしば言われるのです。

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